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英検利用入試の落とし穴?!
執筆者紹介:日野原先生
元ラーメン屋という異色の経歴の持ち主だが、自身は英検1級、ケンブリッジ英語検定CAE(Use of Englishでは英検1級レベルを超えるCEFRC2レベル)を取得する英語のスペシャリスト。
大学受験では医学部や早稲田大学・慶應義塾大学など難関大学に合格させた実績を持つ。
ちなみに、中学受験の国語や、高校の古文にも精通し、様々な科目で活躍している先生である。
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こんにちは、医塾の日野原です。
本日は英語検定(以下英検)を利用する入試についてお話していきます。(英検にはTEAPやIELTSなどもありますが、ここでは利用者の一番多い英検に絞ってお話します)。
「落とし穴」と書きましたが、「英検でより高い級・CSEスコア」を取って「損になる」ということではありません。ただ、試験方式・合否判定方法によっては「思ったほどプラスにならないことがある」ということです。これが落とし穴ですね。
生徒と話をしていると、よく下記に挙げるようなことを言われます。
・準一級取った!過去問演習だと50点くらいだったけど、これで満点扱いなるから50点分の余裕が出る!
・満点換算になれば楽になるから、出願できるギリギリまで準一級に挑戦する!
・英検持っているし、英検利用方式を受けるだけで大丈夫!
このように考えている人がいますが、もしかするとちょっと危険な発想かもしれません。私から強調したいのは、受ける大学の合否判定について確認できていますか?ということです。
このことについて、今回は明治大学を例にとってお話していきます。
明治大学全学部入試では英検などの外部試験を利用する方式があります。以下、当大学の入試要項の引用です。
下記の英語4技能資格・検定試験のいずれかが、所定の基準を満たし、出願時に所定の証明書類を提出できる者のみ出願が可能 です。1時限目『外国語』の試験は免除とし、所定の等級またはスコアに応じて『外国語「英語」』の基礎得点(80・90・100点) を学部ごとに換算し、『外国語「英語」』の得点として付与します。『英語4技能資格・検定試験に応じた学部ごとの得点換算点』 と、『2・3・4時限目において学部・学科・方式が指定する科目の合計点』との総合点で合否を判定します。 ※合否判定は学部・方式ごとに行われます。
ここで大事なのは、
・英数理の3科目受験方式も、英検+2科目の受験方式もあるが、合否判定は学部・方式ごとに行われる。
・英検利用方式の場合外国語の試験が免除になるが、3科目受験方式との併願が可能。
という点です。大学によっては、英検のスコアを提出した上で、英語の試験を受けて高得点になる方を採用する。あるいは、英検利用した人も、英語の試験を受けた人も一緒に合否判定を行う、というケースもありますが、今回のケースはそうではない、ということです。
それでは、英検のスコアの換算得点について「農学部」を例に挙げます。
実用英語技能検定(英検) 【従来型、 S-CBT、 S-Interview】
2級合格かつCSE2.0スコア1980 →80/100点
2級合格かつCSE2.0スコア2088 →90/100点
準1級合格 →100/100点
※基礎得点80点・90点換算は 2級合格者の CSEスコア(CSE2.0)を活用します。他の級で同等の CSEスコアを有していても得点換算の対象となりません。
※基礎得点100点換算については準1級以上の級合格を対象とし、CSEスコアは活用しません。
次に2023年度の農学部(農学科)の全学部入試の合格最低点を見ていきます。
英語4技能3科目入試(英検スコア換算+理+数or国)
231/300 ※配点は各科目100点×3の計300点
この点数を見て何を感じますでしょうか?結構高いと思いませんか?だって、仮に英語が100点換算でも残り二科目で「最低でも」65.5%が必要になるんです。
具体的に換算スコアをパターン別に分けると、
①英検スコア換算が100点の場合⇒残りの二科目で131/200(数・理の得点率65.5%)
②英検スコア換算が90点の場合⇒残りの二科目で141/200(数・理の得点率70.5%)
③英検スコア換算が80点の場合⇒残りの二科目で151/200(数・理の得点率75.5%)
となります。ここで英検利用ではなく、英語の試験を受けた場合(三科目受験)の最低得点率を見ます。
④全学部統一3科目(英+理+数or国)※配点は各科目100点×3の計300点
184/300 三科目の得点率61.3%
各科目6割ちょっとで良いということになります。んん?!って感じですよね。
では具体的な得点で想定してみます。
仮に数学+理科で150点(得点率75%)を取った場合
①、②は合格ですが、③の場合は不合格となります。数学・理科で75%を取っているにも関わらず、です。
そして④の3科目受験の場合は184-150=34と英語で34点を取れば合格となります。明治大学全学部入試の英語は全問マークですので、34点という点数を取るというのはそう高いハードルではありません。
数学+理科140点の場合は②でも不合格になりますが、3科目受験の場合は英語が44点で合格最低点に達します。
このように、英検利用入試のみを考えて出願した場合、英検がプラスに働くどころか残りの二科目のハードルを上げてしまう場合があります。2024年度の3科目型受験の合格最低点が低かった、という側面もありますが、二科目受験の合格最低点の得点率>三科目受験の合格最低点の得点率という傾向は2022・2023年度も同様です。もちろん、合格者の出し方についてはブラックボックスのところももちろんありますが、公表されている合格最低点から言えば以上のような可能性が考えられるということになります。
『満点換算』のメリットを正しく把握することが大切です。
特に今回のように『英語を受験する方式と別々に合否判定を行う』というケースについては注意が必要です。このようなケースにおけるメリットは『満点だからハードルが下がって簡単に受かるようになる』という直接的なものではなく、『早めに』準一級を取得していると、その後に英語にかける時間を減らして、数・理に多く割くことができる、といった間接的なものとなります。
英語に時間を割いてギリギリまで準一級に挑戦して、何とか合格できた!というのはこのケースに限ればあまりメリットがありません。併せて、英語が得意で数・理が苦手、という生徒がこの方式を当てにし過ぎてはいけません。このケースにおいては、英語が得意な人であれば、併願としてきちんと3科目で受験をして、英語で点数を稼いだ方が、苦手な数学や理科で必要な点数のラインが下がります。
これが英検を利用する際の落とし穴です。
まとめ
受験校で英検利用入試ができる場合、
・合否判定は入試方式ごとに行われるのかどうか。
・合否判定が別々で出る場合は、各方式による合格最低点の差がどうなっているのか。
・過去問演習を通して、自分の各科目の入試得点の見通しはどの程度のものなのか。
などは必ず確認・検討したうえで、できれば
英検利用方式と三科目型入試を併願する方向で考えると良いと思います。
繰り返しになりますが、「英検で高い級・CSEスコア」を取って損になる、ということではありません。強調したいのは「満点換算」といった聞こえの良い言葉に引っ張られすぎてはいけないということです。
では、英検利用方式を利用することでメリットが大きい大学はどこなのか?!という話になると思いますが、こちらについては次回お話しできればと思います。
このように大学受験は受験方式の多彩・細分化が進む一方で、それに比例して情報戦の側面も大変に大きくなってきています。受験校の選定や英検についてお困りの方がいらっしゃいましたら是非ご連絡ください。