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東大受験専門塾”鉄緑会”の脅威のスピードと宿題量
執筆者紹介:神田先生
元奨励会員という経歴の持ち主で、現在もアマチュアの将棋大会に出場するなど熱心に活動中。将棋を通して培った論理的な思考力と発想力が、中学受験算数・理科や、大学受験数学・物理の指導に活かされている。
数多くの生徒を東京大学や私大医学部などの難関大学に合格させた実績を持つ物理と数学のスペシャリスト。
自らを「数学オタク」と称し、時間があれば算数・数学オリンピックの問題に挑戦するなど、「考えること」が大好き。神田先生自身が楽しそうに問題に向き合う姿勢が生徒の刺激になると同時に、問題を解く楽しさも伝えてくれるので、数学・物理が好きになる生徒を多数生み出している。
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鉄緑会の数学
「東京大学受験指導専門塾」を掲げる鉄緑会。特に数学の進度は非常に早く、中学校で学ぶ数学の内容は「中学1年生で全て終了」となるほどのペースです。
ここでは、数学の進度や今後の対策についてまとめてみました。
目次
- クラス編成について
- 数学の進度について
- 入塾後に対策すべき数学の内容
鉄緑会のニューストピックス(引用:Diamond Online)
2023年6月15日のDiamond Onlineの記事(https://diamond.jp/articles/-/324448)によると、鉄緑会に通塾していた平山氏が、当時の学習内容についてYouTubeで語ったところ、「中学生がやる量ではない」と反響がありました。
具体的には、以下のような「学習内容」「授業時間・質問対応」「宿題量」について触れられています。
・学習内容
- 数学:中1の間に三平方の定理や二次関数など中3までの内容を終え、中2で高次方程式など高校の数学I・A〜数学IIの範囲、中3で三角関数や微分積分、ベクトルなど数学II・Bの範囲を学習する
- 英語:中1で中学英文法の基本を一通り終わらせ、中2では高度な英文法や長文読解を学び、中3段階で高校英文法を完成させる
・授業時間・質問対応
- 1教科につき週1回3時間の授業。英数2教科なら週2回で6時間となる。
- 授業時間は3時間ながら、30分から1時間延長することが頻繁にあった。さらに授業後には先生の後ろに15人ほどの列ができ、質問対応や宿題チェックが行われており、そのために1時間ほど遅くなることもあった。
・宿題量(中学生)
- 数学:例題の解き直しと問題集から20〜30問、加えて中2は幾何、中3は数Ⅰの復習として4〜5問程度のプリントが課される。
- 英語:文法問題15問、和文英訳10問、長文問題1〜3題、英検準2級程度の単語50〜100語、条件英作文1題、英作文の構成問題10題、リスニング問題10問、英文10個と50語程度のパッセージの暗記(授業内で暗唱)など。
こうして見ると、東大合格に必要な勉強量を早い段階から実践している様子が伺えます。
クラス編成について
鉄緑会では、下記指定校の生徒が無条件で入塾できるため(※無条件で入塾できるのは中学受験終了直後のみ)、生徒数が多く、クラス分けが行われています。
*参考:鉄緑会指定校(2024年8月)https://www.tetsuryokukai.co.jp/features.html
在籍生徒数:開成1118名、桜蔭894名、筑波大学附属駒場596名等。
「オープンコース」と「レギュラーコース」に分かれ、オープンコースはDクラスとして平日の時間に開講されます。鉄緑会の「校内テスト」で優秀な成績を取るとレギュラーコース(A、B、Cのクラス)に進むことができます。
高校2年生の12月(クリスマス前の時期)には「校内模試」が行われ、成績に応じて再編成が行われます。「このクラスなら東大合格率がこれくらい」といったプレッシャーがかけられる重要度の高い模試になります。
数学の進度について
中学1年生
中学の指導要領に沿った内容を「すべて」終了します。
私立中学でよく採用されている「体系数学1」「体系数学2」は、2年間で中学数学全範囲を終わらせるペースで作成されていますが、さらにその倍の速さで進むということです。
中学2年生
「数と式・集合と命題」「2次関数」「三角比」「図形の性質」「場合の数と確率」「高次方程式」「複素数」「指数・対数」など高校数学Ⅰ・Aや数学Ⅱの単元を進んでいきます。
中学3年生
「図形と方程式」「三角関数」「微分・積分」「数列」「ベクトル」など高校数学Ⅱ、数学Cの内容を学びます。
高校1年生:高校文系数学の総復習
「東大文系数学」では、「この時期に東大合格を目指しているのでは?」と思えるほど、発展的な問題を扱います。頻出の「微積分」「確率漸化式」も細かいところまで扱い、校内模試についても東大の入試問題を意識した構成で、「記述式採点」も行なわれます。
高校2年生(文系)
文系は引き続き大学受験数学を扱います。高校1年生では「確実に取るべき問題(入試本番で80点中40点目標)」が中心に扱われていますが、高校2年生・3年生では「入試本番で80点中60〜70点を獲得する」ための難しい問題まで触れていきます。東大を「余裕を持って合格できる状態」を目指している様子です・・・。
高校2年生(理系)
一方、理系は数学Ⅲの学習内容を進めていきます。「平面上の曲線と複素数平面」「関数」(ここまでは文系と共通になりました)、「極限」「微分・積分」の分野を「5か月で」入試に問われる標準知識を習得します。その後、受験対策を進めていきます。12月の校内模試までには全範囲の学習を終えているというペースです。
高校3年生(理系)
引き続き大学受験対策を行なっていきますが、数学については高校2年生までに「東大合格まで辿り着ける数学力」が養われているため、数学よりも物理や化学など理科の勉強が重視されている印象です。
鉄緑会入塾後に注意すべき数学のポイント
中学1年生
中学受験を終えたばかりの時期ですが、多くの受験生が気を抜いてしまうタイミングこそ差をつけるチャンスになります。また、算数と数学はまったく異なる科目ですので、まずは算数と数学の違いを理解することが大切です。数学では次のポイントを習得しましょう。
- 負の数の計算に慣れること(特に符号の扱い)
- 文字式の使い方と計算法則の理解
- 方程式の考え方:「未知の数を文字で置き、条件を数式で表す」
これらを習得することで、代数計算への理解が深まり、正しい式変形ができるようになります。算数が得意な生徒ほど「文字式(方程式)なんて使わなくても解ける」と、受験時代に培った方法で解こうとしてしまいます。しかし、正しく式を立て、式変形によって答えを導くことができない人で、数学が得意になれる人はまずいません。丁寧に式を書き、符号を意識しながら計算する習慣をこの時期に身につけましょう。
また、幾何においては、中学受験で学んだ「相似」や「辺の比(相似比・面積比)」を忘れないことが大切です。大学受験でも必要になる重要な知識の一つです。さらに、証明が導入されますので、「型通りに証明を書く」ことを心がけ、基本的な証明の流れを覚えていきましょう。
中学2・3年生
この時期は、数学の基本的な問題パターンを暗記することが最優先です。数学が得意な生徒は自然にできてしまうことも多いのですが、算数・数学に苦手意識のある生徒ほど、まず問題とその解答を丸暗記することも重要になります。
「丸暗記」しても問題が解けるようにならないと思われる人も多いと思いますが、数学が得意な人は「この方法なら解決できる」という手法を複数身につけており、問題ごとに適切な方法を用いて解答しています。まずはその「解答のための武器」を身につける必要がありますので、問題パターンを覚えていくことが大事ということですね。
高校1・2年生
数学では、「過去問を解いて合格点を取る力」を身につけることが目標になります。記述式問題への対策として、東大入試数学でよく問われる以下のポイントについて念頭に置いておくと良いです。
- 問題設定を正しく理解し、数式で表現する
- 計算規則を忠実に守る(例:ax=a の場合、単純に x=1 とせず、aが0の場合の解も考慮)
- 証明問題では、結論をうまく言い換えて、条件を満たすよう形を整理する
- 背理法や数学的帰納法を正しく理解する
- 対称性や変数の固定・変動の処理に慣れる
これらは東大入試数学の“テーマ”ともいえる頻出のポイントです。問題を解いて、ただ解答を読んで納得して終わらせるのではなく、上記の視点から考えて解き直しを行うことが成績向上のカギとなります。
この記事が、皆さまの数学の成績向上に少しでも役立てば幸いです。